日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

倉敷民商弾圧事件

倉敷民商弾圧事件  

事件の概要  

2014年、倉敷民主商工会事務局員の小原淳さん、須増和悦さんが税理士法違反で、禰屋町子さんが税理士法と法人税違反で不当逮捕・起訴された弾圧事件(注1)。小原さんと須増さんは184日、禰屋さんは428日身柄拘束を受けました。

(注1)倉敷民商事務所への家宅捜査の様子 2013年5月21日朝8時55分頃、ワゴン車3台で広島国税局査察部11人が来ました。その時、小原さんの携帯が鳴り、会員さんからの電話。砂山という国税局査察官班長は携帯を取り上げ、「出るな」と言いました。砂山に、「I建設のものはここにないでしょうね」と聞かれ、実際ないので「ないです」と答えると、砂山は「I建設はそうは言ってない」と声を荒げ、重森という副班長は、「こいつらはウソをつく。全部持って行かなあかん」と言い放ちました。別室で事情聴取され、学歴等個人的なことを聞かれた後、民商とはどんな団体か、全商連とはどんな団体かなど聞かれました。最後に、重森は、「いままで通り仕事ができると思うなよ」と言い残しました。パソコン、文書等多岐にわたるものが押収されました。

事件は、倉敷民商事務局の3人全員が税理士法違反で逮捕・起訴されたもので、一連の逮捕はちょうど消費税増税直前におこなわれました。この事件は、中小業者・個人事業者の立場に立ち、過酷な課税に反対する民商の組織破壊を狙った弾圧事件です。倉敷民商を税理士法違反で弾圧するために、倉敷民商事務局員の禰屋町子さんが当時会員だったI建設の脱税を手伝ったとする架空の脱税事件のストーリーを利用したものです。そして、強制捜査や公訴提起は、倉敷民商の活動を嫌悪し妨害するためのもので、公訴権の濫用です。

民主商工会は、中小業者の利益を守るための活動をしていますが、民商事務局の果たす役割はさまざまです。決算期における税務申告に関するサポートも事務局の役割のひとつです。倉敷民商では、会員の自主記帳・自主計算・自主申告をサポートしています。その目的は、会員が自主記帳・自主計算することにより、自らの経営状態を理解し、経営上の弱点を克服して営業を発展させることです。そして、自主申告を推進して税務の仕組みを理解し、大きくは民主的な税制の実現を求めるとともに、身近な問題としては税務調査における税務署職員の不当又は違法な調査等を跳ね返せるようになることも重要な目標です。

戦前から権力による弾圧とたたかってきた国民救援会は、倉敷民商弾圧事件が、徴税強化に反対し、業者の暮らしと権利を守りたたかう民主商工会への弾圧であり、憲法で保障された主権者・国民の自主申告納税権の侵害をはねのけ、その確立を勝ちとるたたかいであると位置づけ、支援をしています。

小原淳さん、須増和悦さんが税理士法違反で、禰屋町子さんが税理士法と法人税違反で逮捕・起訴されたため、裁判は、小原さん・須増さんの裁判、禰屋さんの裁判の2つの裁判となりました。そして、禰屋さんの裁判では、法人税法違反の審理があるため、小原・須増裁判が先行しました。

【小原・須増裁判】  

小原さん、須増さんは、税理士の資格がないにもかかわらず、民商会員の確定申告書作成のサポートをしたことで、税理士法52条(税理士以外は税理士業務(ここでは税務書類の作成)をおこなってはならない)に違反したとして裁判にかけらました。2人がしたことは、民商会員が持ってきた会計資料の数値を税務用のパソコンソフトに入力しただけで、税理士のように専門的な判断を要しない作業でした。

【第一審・岡山地裁】
一審の岡山地裁は、検察側の主張・立証には十分な時間をかける一方で、小原さん・須増さんや弁護団の主張・立証にはほとんど耳を貸さず、とりわけ立証についてはその機会をほとんど許さないという極めて偏頗な訴訟指揮をおこない、2015年4月14日、不当な有罪判決(懲役10月・執行猶予3年)を出しました。

そのため、判決での事実認定では、ほぼ検察側主張をなぞったものでした。ただ、小原さんについての検察の求刑は懲役1年6月でしたが、判決は懲役10月で執行猶予をつけ、さらに未決勾留日数を100日算入して刑を軽くしています。判決は、小原さん、須増さんの行為は、中小業者のためにやったことで、私利私欲のためではない、そしてそもそも2人が作った確定申告書に誤りもなく、法が守ろうとした利益(法益)である「課税の適正」は害されていないことを理由に刑を下げたのです。

 一審判決は小原さんたち2人が作成を手伝った民商会員の確定申告書は適正なものであり、誰にも迷惑はかけていないことを認めました。しかし、税理士法の立法目的「課税の適正かつ円滑な運用」を「損なうおそれ」があったから有罪だとしました。

【控訴審・広島高裁岡山支部】
 控訴審(二審)は、広島高裁岡山支部でしたが、弁護団は、「結社の自由」など新しい主張も打ち出し、それに関する証人調べを求めましたが、裁判所は1人の証人も採用せず、小原さん、須増さんの被告人質問をやることもなく、一回で結審して控訴棄却という不当判決を出しました。
二審判決も、税理士法の立法目的は「課税の適正かつ円滑な運用」であり、税理士法の当該規定は、それを「損なうおそれ」を防止するために定められたものであり、限定的に解釈する理由はないと形式的判断をおこない有罪としました。

ただ、申告納税制度については、弁護団の主張を認めざるを得ず、「憲法上の要請から尊重されるべき」と判断しました。

【上告審・最高裁】
 弁護団は、上告審でも多くの論点を提示し、小原さんと須増さんの無罪を主張しました。その中で、比較的わかりやすいものを示すと次の通りです。

税理士法52条の趣旨・目的 控訴審までは、弁護団も裁判所と同様に、税理士法52条について、課税の適正を確保するために、有資格者である税理士の税務独占が認められていると解釈してきました。しかし、あらためて税理士法制定・改正当時の国会議事録などを調べたところ、同条は「納税者の税務上の利益の擁護」が第一次的な目的であり、「課税の適正の確保」はその結果に過ぎないことが明らかになりました。そうであれば、小原さん、須増さんがサポートして作成した書類は正しいのですから、第一次的な目的である納税者(民商会員)の利益は擁護されているので、処罰する必要がないことがいっそうはっきりしました。また所得税法などの租税実体法では、不正に課税を免れる行為だけが処罰されます。それなのに単なる業法に過ぎない税理士法が、正しい書類の作成をサポートしたことまで処罰するのはおかしいと言わざるを得ません。

税理士法52条に反した場合でも一律に罰する必要はない 憲法31条は「適正手続の保障」を定めており、たとえば、適正な手続に則って被告人を扱わないと違法になります。この31条は、手続だけにとどまらず、法の内容の適正も定めていると解釈されています。「実体的デュープロセス論」と呼ばれます。立命館大学法科大学院の浅田和茂教授の意見書によれば、デュープロセス論から解釈すると、税理士法で一律に税理士資格のない人の行為を罰するのはおかしいのです。たとえば、弁護士資格のない人が法律相談などの法律事務をすると弁護士法72条違反になります。この条文の解釈について最高裁は、一律に罰する必要はなく、「私利を図ってみだりに他人の法律事務に介入することを反復するような行為」を処罰すれば足りると限定しました。これを税理士法52条に当てはめれば、税理士資格のない人の税理士業務について、一律に罰する必要はなく、「私利を図ってみだりに他人の税務に介入することを反復するような行為」だけを処罰すれば足りるということになります。

小原さん・須増さんを罰することは結社の自由に反する 控訴審から主張した結社の自由論を深め、「結社の自由」が専門である白鷗大学・岡田順太教授に意見書を作成していただきました。岡田教授は、2点指摘されています。

 第1に、倉敷民商は、政治的なアピールをする表現的結社であると共に、相互扶助的な協同組合的な結社である、そういう結社は、営利を目的とした株式会社よりもより強い憲法上の保障がなされる必要がある。

 第2に、裁判では「他人の求めに応じて」税理士業務をおこなったのかどうかが争点になっています。この「他人」性の解釈の問題です。たとえば、株式会社で税理士資格のない従業員がその会社の法人税確定申告書を作成しても、税理士法に問われません。それは従業員がその会社との関係で「他人」ではないとされるからです。それでは、民商事務局員はどうか。岡田教授は、この「他人」性を判断するうえで、3要件=“麁販性、非選別性、H鸞于狙を検討し、要件を充たせば「他人」とは言えないと指摘しています。倉敷民商弾圧事件で検討すると、‐原さんが民商の方針とは別に、自分の判断で確定申告書の作成のサポートをしているわけではないので、「非独立性」を充たしている。⊂原さんが、Aさんは好きだから確定申告書をサポートするけれども、Bさんは嫌いだからしないという選別はできないので、「非選別性」の要件を充たしている。K/佑僚抄醗は申告書を作成して給与をもらうという意味での対価性はあるが、それを作成したから特別ボーナスが出るわけではない。民商事務局員も給与はもらっているが、確定申告書の作成をサポートしたからといって特別ボーナスが出るわけではないので、「非対価性」の要件を充たしている。以上から、民商会員と事務局員の関係も、法人と従業員の関係と同じく、「他人の求めに応じて」とはいえないということです。

相模原交友会事件判決批判 昭和30年代に、相模原民商(当時は相模原交友会)の事務局長が、税理士法違反で弾圧された事件があります。残念ながら、最高裁までたたかいましたが敗訴しました。この事件は、パソコンや税務・会計ソフトのない時代の事件であり、社会背景が大きく異なり、しかも伝票類など全ての会計書類を事務局が会員から預かり計算をおこなっていたなど、倉敷民商弾圧事件とは事実関係も大きく異なります。本件には妥当しない事例判決であることを強調しました。

 このような論点を提出し、憲法論、法律論のたたかいを挑みましたが、最高裁第3小法廷(林景一裁判長)は、一切の憲法論から逃げ、具体的な判断を示さず、2018年5月、上告を棄却する不当決定を出し、小原さん、須増さんに対する懲役10月・執行猶予3年の不当判決を確定させました。決定は5月29日付け。
※決定を出した裁判官=林景一(裁判長)、岡部喜代子、山敏充、戸倉三郎、宮崎裕子(各裁判官)

【判決で勝ちとった成果】
 小原・須増裁判は一、二審とも有罪でしたが、判決で成果を勝ちとっています。
一審判決は、二人が「私利を図ったものとは認められず、……中小商工業者の営業や生活の保護を目的とし、その支援を行」ったものと認定。二人が作成した税務書類は「適正を欠くものであったとは認められず、適正な課税が実質的に損なわれたとまではいえない」と行為の正当性を認めました。
 さらに二審判決は、申告納税制度について「国民主権原理を謳う我が国の憲法上の要請からも十分に尊重されるべき」と重要性を認めました。また、税理士法が「納税申告に当たっての納税者の相互協力をも規制対象としているわけではない」として、互いに学びあい助け合う民商の活動も認めました。

禰屋裁判  

禰屋さんは、法人税法違反と税理士法違反に問われています。
法人税法違反については、そもそも脱税正犯とされているI建設には脱税工作のために作られる隠し預貯金や隠し不動産など(脱税による蓄財)がないことから、不正の手段によって税金の支払いを逃れるという意味での「脱税行為」自体が存在しません。まして禰屋さんが脱税を手伝ったとする根拠は全くありません。

税理士法違反については、禰屋さんは「税務書類の作成」はしておらず、会員自ら持参した伝票から決算書を作り、確定申告書の作成ソフトへ機械的に転記・入力しただけで、申告書は会員みずからが確認・署名して作成したものです。

【第一審・岡山地裁】
岡山地裁(江見健一裁判長)は、法人税法違反について、訴追側の当事者である木嶋輝美査察官の意見書を「鑑定書」として証拠採用する一方、弁護側が求めた意見書や証人の証拠調べは一切おこないませんでした。
検察は懲役2年を求刑。
2017年3月、岡山地裁で懲役2年・執行猶予4年の不当判決。(裁判長‥江見健一、裁判官‥新宅孝昭、河原崇人)

判決は、禰屋さんの供述や弁護団の主張をいっさい検討せず、検察官の主張は検証することなく無批判になぞったものとなりました。
税理士の資格がないのに確定申告書などの税務書類を作成したとされた税理士法違反について判決は、禰屋さんが倉敷民商の業務として、継続的に対価を得て、確定申告書を作成したもので悪質だと判断。「税理士法違反の常習性及び組織性は顕著」などとして、禰屋さんのみならず倉敷民商の活動自体を敵視しました。判決は、禰屋さんが作成の手助けをした確定申告書を、申告者本人が押印して税務署に提出した事実に一切ふれず、組織維持・運営のために集めている特別会費も書類作成の対価と見なしました。さらに「申告納税権なる権利は憲法上保障されていない」と述べ、小原・須増裁判で広島高裁が申告納税制度を「憲法上の要請から尊重されるべき」とした判断から大きく後退させました。

禰屋さんが脱税の手伝い(ほう助)をしたとされる法人税法違反については、脱税本犯を告発した木嶋国税査察官の作成した報告書を、「鑑定書」として証拠能力があると認め、これに沿って禰屋さんが自らの判断で架空経費を計上させるなどして脱税を助けたと判断しました。そもそも木嶋氏は事件を告発した人物で、作成した報告書は、検察側と同じ訴追側の立場にたつものです。内容も部下が作成した報告をまとめた伝聞証拠であり、公平性も客観性もありません。しかし江見裁判長は、査察官が「特別の学識経験に基づいて作成した書面」であるとし、鑑定書にあたると認め、その信用性も認めました。

余談ですが、この判決言い渡しの後、思いもよらないことが起きました。
裁判長が判決を宣告し閉廷を告げたあと、憤りを抑えきれない傍聴席から「不当だ」「おかしいぞ」などの発言が出ました。傍聴者は発言をしつつも徐々に退出する状況のなか、突如として法廷内に40人ほどの制服警察官が次々と乗り込んで、退出しようとする傍聴者の周囲に立ちはだかりました。直前に裁判長が法廷内の職員に目配せで合図し、職員が無線で連絡を取る様子が確認できました。

裁判所に確認したところ、警察官は江見裁判長の要請によって法廷そばの別室で待機していた岡山県警の警察官であることが分かりました。弁護団の報告によると、閉廷後に弁護団が裁判長に「警官を投入する必要はない。やり過ぎだ」と抗議をすると、「私の考えだ」と述べたとのことでした。判決が、民商の活動自体を違法なものと決めつけ敵視しているのと同様に、裁判長が傍聴者を敵視していることがうかがえる異常事態となりました。

【二審・広島高裁岡山支部】
 一審判決は、広島国税局の木嶋輝美査察官の報告書(以下、「報告書」)を鑑定書として採用し、それにもとづきI建設が脱税し、禰屋さんがほう助(手助け)したと認定しました。これに対して、控訴審で弁護団は、脱税ほう助は冤罪であるとして、次のとおり指摘しました。

■「報告書」は鑑定に値せず、採用したことは誤り
 この「報告書」は鑑定書といえるものではありません。
 木嶋査察官は、国税局の捜査官として、国税局が収集した資料をもとに脱税のストーリーを作り上げ、訴追のための資料として検察官に提供するために報告書をまとめただけです。その中身も、木嶋査察官自身が帳簿などの全資料に当たったものではなく、他の査察官の報告書を孫引きするなど、他人のものを利用したものです。また木嶋査察官は、I建設を脱税で告発した本人で、公平な鑑定人とは到底いえません。一審判決が「報告書」を採用したことは誤りです。

■I建設に脱税の故意はない
 裁判所は、有罪方向の事実のみを取り上げ、禰屋さんが法廷で詳細に主張した内容を全く検討していません。
 弁護団が税理士の協力も得て検証したところ、本来、その期の内に収入として計上されるべきものが次の期に回され、結果「期ずれ」となる売上の繰り延べはありましたが、翌年以降の売上になるので結局は課税され、課税される金額は減りません。さらに、査察官の調査でも、脱税による蓄財(「たまり」)はありませんでした。脱税のために原資料を偽造したり、隠匿した事実もありません。仮にI建設関係者に経費の水増しや棚卸の調整などの認識があったとしても、I建設には「たまり」はなく、「たまり」がない場合には法人税法違反として告発しないというのが国税局の扱いです。

■「脱税」ほう助の事実ない
 一審判決で、禰屋さんを有罪とした証拠は、「報告書」とI建設の会計担当者の供述です。しかし担当者の供述は、脱税の経緯などあいまいで、一審判決も「具体性を欠く部分が多いことは否めない」と認めています。
 禰屋さんは、毎年I建設の決算期に数回、I建設の事務所を訪れる程度で、個々の建築現場の進行状況や金銭の動きなど、事業の実態を把握できる状況にはありません。また、帳簿類の真偽についても、禰屋さんは関知していません。禰屋さんは、会員が正しい法人税等の確定申告をするようにと、I建設の担当者の指示に従い、数値をパソコンに打ち込み、会計処理をしただけです。
 くわえて禰屋さんには、脱税を手助けする動機もなければ、I建設からなんらの利益を供与された事実もありません。
 弁護団は、税理士法違反の点については、次のように主張しました。
 税理士法では、税理士でない者が、他人の求めに応じて、業として税務書類を作成した場合、それを犯罪としています。しかし、禰屋さんは会計処理をしただけで、「他人」の求めに応じたのでもなければ、「業として」おこなったものでもありません。

■禰屋さんの行為は税務書類の作成ではない
 禰屋さんの行為は、民商の会員から提供された会計資料の数値を、民商事務所にあるパソコンに機械的に打ち込み、印刷しただけです。

■「他人の求めに応じて」
 民商は、「自主記帳」「自主計算」「自主申告」を掲げ、会員同士が学び合い、知識や能力不足を補い合っています。民商事務局員は、それに必要な支援と手助けをする関係にあり、それは業者運動の推進をめざす仲間の関係です。決して「他人」ではありません。

■「業として」
 民商事務局員は、民商の活動の共同の運動の推進者であり、中小業者の仲間として、営業と暮らし、権利を守り向上させるため、ともに民商・全商連運動に参加しているのです。単に雇用された労働者でなく、役員と一緒に運動に責任を持つ立場にあります。禰屋さんの行為も、私利を図ったものではなく、民商がめざす運動の一環です。いわゆる「生業」とはいっさい無縁の行為です。

■無害な行為の処罰許されない
 禰屋さんの行為は、課税の適正を害することのない行為です。小原・須増裁判では、課税の適正を侵していないけれども、侵す「おそれ」があるとして有罪とされました。しかし憲法が求める「適正な手続」の理念から、無害の行為を観念的に「おそれ」があるとして罰することは許されません。国公法弾圧堀越事件の最高裁判決でも、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こりうるものとして実質的に認められる」行為に限定して適用すべきだとしています。

 税金を申告して納税することは憲法上の権利であり、申告納税制度の理念に沿って、罰則の適用は限定的に解釈されなければなりません。無害な行為は処罰せず、私利を図り、みだりに他人の「税務処理」に介入することを反復するような行為のみに、処罰は限定すべきです。税理士以外が税理士業務をおこなえば一律処罰される、との解釈は誤りです。

■結社の自由の侵害
 民商は、中小業者の営業と暮らし、諸権利を守り、社会的・経済的地位の向上を図ることを目的とする、憲法で保障された結社です。その活動は、不公正な税制を改革する運動、経営を守る運動、平和と民主主義を守る運動などに及び、申告納税権の実現も含んでいます。禰屋さんら事務局員は、民商会員とともに、民商の結社の自由の重要な主体です。
 さらに、弁護団は、本件起訴が倉敷民商の活動に対する弾圧を目的としてなされたものであると厳しく指摘します。それは捜査の経過から明らかです。

 2014年2月、警察・検察は、個人所得税の確定申告(3月)や消費税率の5%から8%への増税(4月)を控えた時期に、禰屋さんら3人を逮捕し、小原さん・須増さんを184日間、禰屋さんを428日間も身柄拘束しました。事件とは関係のない民商や会員に関わる大量の資料や、民商の活動に不可欠なパソコンなどを違法に押収しました。この事件によって法人会員が96社から40社へと大幅に減少しました。
 その一方で、I建設の社長夫妻は逮捕されず、いっさいの身柄拘束もされていません。パソコンも押収されず、データを印刷させ提出させただけです。脱税した際に課せられる重加算税の課税の可否についても、社長の妻は証言を拒絶し、裁判所からの照会に税務署は回答を拒絶するなど、妻、税務署、検察が一体となって事実を隠そうとするのは、実際には重加算税が課せられていないと考えられます。I建設に国税の筋書きを認めさせるために、パソコンの差押えを控え、身柄拘束を勘弁してやると、利益を供与しているのです。

 また、木嶋査察官によれば、脱税で調査していた国税局は当初税理士法違反を問題にしていませんでした。しかし、検察が問題にしたため告訴したものです。
 一連の捜査や起訴の経過から、今回の事件が、倉敷民商の弾圧を目的としておこなわれたことは明らかです。
 広島高裁岡山支部(長井秀典裁判長)は、2017年10月の控訴審の第1回公判で、有罪判決の証拠を批判した浅田和茂・立命館大学教授の意見書を採用するも、その他の証拠・証人は不当にも採用せず結審しました。

【破棄差し戻し判決】2018年1月、広島高裁岡山支部(長井秀典裁判長)は、地裁判決を破棄し差戻す判決を出しました。
 高裁の判決では、〆沙ヾ韻調査にあたって税法の知識が必要であるのは当然で、調査の内容も専門的な知識によるものとはいえない、⊆尊櫃膨敢困鬚こなったのは木嶋査察官ではなく別の査察官であり、「鑑定書」として証拠能力はない、と判断。そのうえで、「鑑定書」と認めるべきではない査察官報告書を採用し、それを事実認定に用いたことは、明らかに訴訟手続に違反するとして、一審判決を破棄し、審理を岡山地裁に差し戻しました。そのほかの弁護団の主張(禰屋さんが脱税の手伝いをした事実はない、税理士法に違反する行為もしていないなど)についての判断はおこないませんでした。
 高裁の判決は、検察のずさんな立証、また検察に「鑑定書」として出すよう「助け舟」を出し、有罪とした一審の裁判所の不当な姿勢を断罪する内容でした。
 差戻し判決を勝ちとった力は、事件当事者が全国に支援を訴え回ったこと、弁護団が判決の不当性をわかりやすく弁論し裁判官を説得したこと、支援者が短期間に5万を超える署名を集めるなど全国に支援を広げたことです。

【差し戻し第一審・岡山地裁】
 禰屋裁判は、現在(2020年5月現在)、岡山地裁に係属していますが、高裁の差し戻し判決が出されてから2年4か月以上経過した現在も、公判が開かれていません。
 それは、本来起訴するときに出しておくべき立証計画を、高裁の差し戻し判決が出されてから、1年近くも検察は出さなかったからであり、その後も、出してきた立証計画に様々な不備(違法の点も含めて)があり、それを禰屋さんの弁護団に指摘され、修正してきたためです。それだけではありません。その立証計画では、司法研修所で教えられている立証方法であれば、脱税の場合、領収書などの原始資料を証拠として立証しなければならないところ、自ら間違いだと言って脱税に問うているI建設が作成した資料を証拠として使うという立証計画を出してきたのです。そのことを弁護団が指摘すると、「(まともにやっていたら、)2,3年かかる」と逆切れするという一幕もあり、本来検察がやらなければならない証拠の整理を、禰屋さん無罪を勝ち取るために弁護団がおこなうというおかしな事態になっているのです。弁護団は、検察官が主張・立証計画を示さなかった時期には、異常な状況を糾弾し、検察官に公訴取消を、裁判所に公訴棄却を求める意見書を提出しましたが、事態は変わらず、現在に至っています。

今求められていることは、岡山地裁の公判が始まったときに、禰屋さんの主張・立証の機会を裁判所が十分に設けるように、裁判所に公正な裁判を行うことを求める市民の声を届けることです。そのための裁判所あての署名にぜひご協力をお願いします。

資料  

署名  

powered by Quick Homepage Maker 3.60
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional